「試作品の干渉チェックに何度も手間取っている」
「開発コストが予想以上にかさんでしまう…」
製造業の製品開発におけるこのような課題は、もはや避けられないものではありません。デジタルモックアップ(DMU)を導入することで、製品開発プロセスの改善に期待ができます。
この記事では、デジタルモックアップの概要とできることについて解説します。
目次
デジタルモックアップ(DMU)とは?
デジタルモックアップ(Digital Mock-Up, DMU)は、3DCADで設計した3Dモデルをコンピュータ上で再現する技術です。
「実物大の仮想的な模型」をPC上に作り、物理的な試作品を制作する前にあらゆる検証を行うことができます。
物理的なモックアップとの違い
物理的なモックアップ: 実際に材料を使って組み立てるため、時間やコスト、スペースを多く消費します。
デジタルモックアップ: PC上で完結するため、変更や検証が瞬時に行え、大幅なコスト削減と時間短縮が可能です。

試作の回数を減らすことはできますが、完全に試作を”0”にするというのはまだ難しいと思います。
デジタルモックアップがもたらす3つのメリット
デジタルモックアップは、単なる設計ツールではなく、製造プロセス全体に大きなメリットをもたらします。
メリット1:開発コストと期間を削減
物理的な試作を削減できるため、材料費、加工費、人件費を削減できます。
また、手戻りが減ることで、製品開発全体の期間を短縮し、市場投入までのスピードを加速させます。

物理的な試作品を1回作るコストで、デジタルモックアップなら何回も検証することができます。
メリット2:設計品質と精度の向上
複数の部品からなる複雑な製品でも、デジタルモックアップ上で各部品の配置や動きを正確にシミュレーションできます。
これにより、部品同士の干渉(クリアランス不足)や組み立て上の問題点を、製造に入る前に発見し、修正することが可能です。
- 干渉チェック
- 組み立てシミュレーション
- 配線・配管の取り回し検証
- メンテナンス性チェック
- 設計レビュー
メリット3:部門間のコミュニケーションを円滑化
設計部門、製造部門、営業部門など、異なる部署間で製品の完成イメージを正確に共有できます。
3Dモデルは、2Dの図面だけでは伝わりにくい複雑な構造も直感的に理解しやすく、関係者間の認識のズレを防ぎます。
デジタルモックアップツールの紹介
私が知っているデジタルモックアップツールを紹介します。
MREAL
キヤノンが開発したMREALは、現実世界にデジタル情報を重ね合わせて表示するMRシステムです。
実際に目の前にある物理的な設備や空間にデジタルモックアップの3Dモデルを重ねて表示し、設計の問題点や作業手順をリアルタイムで確認できます。
Xphere
Xphereは、デジタルプロセス株式会社が提供するVRのデジタルモックアップツールです。
VRなので、仮想空間上に設計した3Dモデルを表示して確認することができます。
まとめ
デジタルモックアップは、従来の物理的な試作プロセスに代わる、製造業のDX(デジタルトランスフォーメーション)を加速させる重要な技術です。
時間とコストを削減しながら、製品の品質を高め、市場競争力を強化する効果が期待できます。
ものづくりワールドのような展示会で出展していることがありますので、展示物をチェックし、展示されている場合は実際に自分の目でどういったツールなのか確かめてみることをオススメします。
また、企業によってはお試しでツールを貸してくれるところもあるので、お試しで使ってみるのもよいでしょう。
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